こんにちは。
最近ちょっとだけ薬学をかじり始めたasaです。
頭痛に早く効く!なんてキャッチフレーズの薬、ありますよね。
私もですが、お世話になっている方は多いのではないかと思います。
でも、「なぜこの薬は他より早く効くんだろうな?」と考えたこと、ありますか?
最近勉強していて、なるほどそういうことだったのか、と思ったので
今日は薬の効き方についてまとめます。
薬が効くまでの流れ
頭痛がして、鎮痛剤を飲んでその頭痛が治まった時、私たちは「薬が効いた」と表現しますね。
では、薬がどのような状態になったら、「効いた」と感じるのでしょうか。
それは、薬が血液中に吸収されて、薬の血液中の濃度(血中濃度)がその薬が「効く」領域に達した時です。
血中濃度が早くその領域に達すれば、早く効くことになります。
鎮痛剤であれば、薬を飲んでから早くても30分くらいしないと「効いた」感はないですよね。
その時間、薬は様々な試練にさらされつつ、体内を旅しているのです。
薬が血液に取り込まれて作用するまでを、経口薬で考えてみましょう。
口から入った薬は胃で溶解され、その後小腸から吸収されて門脈という静脈を通り肝臓へ向かいます。
そして、肝臓を経由して血液に入り、全身を巡り、患部に到着して作用します。
(出典:日本臨床薬理学会)
つまり、血液の中に薬効成分が入り込むには、胃を経由して、小腸で吸収されて、肝臓を通過しなければなりません。
どんなに早く効く薬でも、経口薬であればこのルートを通過するため、薬が効くまでには時間がかかるということになります。
静脈注射が早く効く理由
静脈注射は、薬剤を直に静脈へ投与する方法です。
私も経験がありますが、たちどころに症状は回復します。
なぜ静脈注射が早く効くのかは、おわかりいただけたと思います。
先ほどの経口薬のように「胃→小腸→肝臓→血液」というルートを通らずに直接静脈に薬剤が入り込むので、薬剤の血中濃度が速やかに「効く」領域に達するからですね。
同じように効き目の早い薬として、筋肉に注射する筋肉注射、舌の下に入れて溶かす舌下錠などが挙げられます。
これらも、血液まで早く到達することができるため、静脈注射ほどではないですが、効き目が早い薬といえます。
また、肝臓では代謝という作用によって、薬剤が分解されて薬効成分が失われてしまうことがあります。
そのため、肝臓を経由せずに血液中に薬剤が入ると、投与した薬剤がより効果的に作用します。
効き目の早い経口薬は?
早く効き目を得たければ静脈注射がいいですよ、といっても日常生活で私たちが飲む薬は錠剤やカプセルなどの経口薬が大半です。
同じ効果をもたらす薬剤でも、成分などによって効く早さは異なります。
では、どうやってその早さを知ることができるのでしょうか。
効き目の早さを知る指標
効き目の早さは、「最高血中濃度到達時間(Tmax)」という数値によっておおよそつかむことができます。
血液に入った薬剤の濃度推移をグラフにすると、下記のような曲線になります。
(出典:看護roo!)
血中濃度がピークに達するまでの時間が最高血中濃度到達時間(Tmax)です。
この時間が短ければ短いほど、「早く効く薬」と言えます。
「早く効く薬」と最高血中濃度到達時間
実際にその違いを確かめてみました。
薬を買ったときに入っている紙には、残念ながら最高血中濃度到達時間(Tmax)の記載はありません。
「添付文書」と呼ばれる、医師・薬剤師向けの取扱説明書には載っていますので、こちらを参考にしました。
添付文書については医薬品医療機器総合機構(PMDA)の検索画面から検索することができるほか、製薬会社がHPで公開していることもあります。
比較したのは、鎮痛剤として用いられる下記3種類の薬剤です。
- ロキソニン:「早く効く薬」の代名詞
- イブプロフェン:商品名「イブ」などに配合されている薬剤
- アセトアミノフェン:商品名「カロナール」など。効き目が穏やかだと言われている
早く効くと言われるロキソニンは、イブプロフェンと比較して本当に最高血中濃度到達時間(Tmax)が短いのか、
そして「穏やかに効く」鎮痛剤はやっぱり最高血中濃度到達時間は長いのだろうか、
そんな疑問を持ちつつ、調べてみました。
結果はこちらです。
最高血中濃度到達時間(Tmax)
- ロキソニン錠60mg : 約 0.45 時間
- イブプロフェン200mg:約 2.1 時間
- アセトアミノフェン(カロナール)200mg:約0.46 時間
ロキソニンは確かにイブプロフェンと比較するとTmaxは短いので、イブプロフェンより早く効くと言えますね。
意外だったのは、「穏やかな薬」と言われるカロナールがロキソニンと同じくらいの早さだったことです。
最高血中濃度(Cmax)がイブプロフェンと比較したら半分ほどだったので、「早く効くが、あまり強く効かない=穏やかに効く」ということなのかもしれません。
ここはもう少し調べてみます。
まとめ
早く効く薬は、薬効成分が早く血液中に取り込まれる薬です。
経口薬の場合、胃で溶解され小腸で吸収、肝臓から血液へというルートを通るため、
そのルートを通らない、静脈注射や舌下錠などの投与方法のほうが早く効きます。
薬剤の血中濃度が最高に達する時間(最高血中濃度到達時間)は、
その薬が早く効くのかどうか、服用してどれくらいで効くのかの目安になります。
身近なようでよくわかっていない薬が効く仕組み。
勉強してみると、なかなか面白いです。
次のサイトがわかりやすかったので、興味を持たれた方は参考にしてみてください。
- 薬の質問箱:日本臨床薬理学会
- 健康成人における薬物動態:看護roo!
私は「添付文書がちゃんと読める薬物動態学」という本で学習中ですが、
こちらもおすすめです。