イートモ

初学者が思う、医学翻訳の学習にイートモが必要な理由

こんにちは、asaです。

医学翻訳対訳ソフトのイートモを作成されている成田さんの、こちらのブログ記事2件を拝見しました。

 

上の記事では、私が自分のブログ記事に少し書いた、今学習素材としている抗がん剤の添付文書の翻訳について書かれています(ブログ記事のご紹介、ありがとうございます!)。

実際にこの文書を使用して対訳学習をしていた時にも思っていたのですが、今回の成田さんの記事を読んで、改めて「イートモは医学翻訳の初学者に必要!」だと思いました。

(もちろん、初学者以外にも別の理由でイートモは役に立つはずです)

 

なぜそう思うのか、この添付文書での対訳学習の気づきをもとに、初学者の立場でお話します。

 

医学翻訳初学者のこれまで

私は現在、中国語の医療翻訳をメインにお仕事を頂いています。

仕事の幅を広げるために治験翻訳と呼ばれる分野の学習を始めたのが、今から2ヶ月程前の7月中旬のことです。

治験翻訳とはどんなものなのか、そもそも治験って何なのかからざっくりと学習しました。

(ちなみにこの段階でもイートモはとても役に立ちました。医薬英語対訳検索ソフト・イートモ 導入1週間時点での使い方という記事にまとめています)

 

先月はまず、エリキュースという抗凝固薬の添付文書を学習素材にして翻訳学習をして、今後どこをどう強化していけばよいのかを確認しました。

そこからさらに資料を読んだり、イートモの例文でトレーニングをして少し「レベルアップ」してから、今回のキイトルーダという抗がん剤の添付文書の翻訳学習に入ったという流れです。

この状態でまず自分で切りのいいところまで訳し、実際に翻訳文書として公開されている文書と比較していました。

すると、若干困ったことが起きたのです。

それは、公開訳に「そこまで訳してしまってよいのか」と思うところが多く「どう訳すのがよいのかわからない」ということです。

 

初学者が対訳と比較するとどうなるのか

この添付文書の訳文については、成田さんのブログで一部紹介されていました。

すみません、勝手に引用させて頂きます。

英語原文和訳

1.2 Non-Small Cell Lung Cancer

KEYTRUDA is indicated for the treatment of patients with metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC) whose tumors express PD-L1 as determined by an FDA-approved test with disease progression on or after platinum-containing chemotherapy. Patients with EGFR or ALK genomic tumor aberrations should have disease progression on FDA-approved therapy for these aberrations prior to receiving KEYTRUDA [see Clinical Studies (14.2)].

This indication is approved under accelerated approval based on tumor response rate and durability of response. An improvement in survival or disease-related symptoms has not yet been established. Continued approval for this indication may be contingent upon verification and description of clinical benefit in the confirmatory trials.

1.2 非小細胞肺癌

KEYTRUDAは、白金製剤を含む化学療法後に疾患が進行した、FDAが承認した診断薬により腫瘍細胞がPD-L1陽性と判定された転移性の非小細胞肺癌の治療を適応とする。EGFR遺伝子変異又はALK遺伝子変異を有する患者については、KEYTRUDAの投与前にこれらの変異に対するFDAが承認した治療後に疾患が進行した患者とする[臨床試験(14.2)参照]。

本適応は、抗腫瘍効果及び効果の持続性に基づき、迅速承認を取得した。生存期間及び疾患に関連する症状の改善は確立されていない。本適応の継続的な承認は、検証試験での臨床効果の確認及び記述を条件とする可能性がある。

 

今回の添付文書、全体的に一言でいえばかなり「まるめて」翻訳をされているという印象を受けました。

もちろん一字一句英語を日本語に反映させればよいわけではなく、ある程度言葉を補う必要があったり、逆に訳語として反映させる必要がない言葉があったりすると思います。

その、「ある程度」の「程度」が初学者にはわかりません

 

前回対訳学習として使用したエリキュースのほうが、忠実に訳されている印象がありました。

このあたりは翻訳者というよりも、クライアントのスタイルによるのかもしれません。

 

このキイトルーダ、とても有名な抗がん剤です。

その和訳なので、これが添付文書の和訳のスタイルとしてスタンダードなのだろう・・・とこれだけみると思ってしまうのです。

それを自分で検証するには、いくつか同じように対訳資料を自分で収集して見比べる必要があります。

 

ただ、それはかなりの手間ですし、自分の中の「これが適切」というストックが少なすぎるので、結局は「どうやって訳すのが適切なのか」という問題が解決されない可能性もあります。

そんな時にイートモが役に立ちます。

医学翻訳のプロが、日々メンテナンスをしてくださっている対訳集です。

自分の訳と公開訳が異なっているときに、イートモの似たような例文を参照にして、最終的に「とりあえず今の自分がベストと思う訳」で訳出しています。

 

対訳学習時にイートモを参照した実例

今回の対訳学習で、「ん?」と思ったところは実はかなり多いです。

これはもちろん、自分のレベルがまだまだ低いということもあります。

それでも、「これはこっちのほうがいいんじゃないか」ということもあります。

そういうときに、イートモは強力なツールになります。

 

一例を挙げます。上で引用した添付文書の一文です。

This indication is approved under accelerated approval based on tumor response rate and durability of response.

(公開訳)

本適応は、抗腫瘍効果及び効果の持続性に基づき、迅速承認を取得した。

(私の訳)

この効能・効果は腫瘍奏功率及び奏効の持続性に基づいて迅速承認を受けた。

この中のtumor response rateが「抗腫瘍効果」と訳されているのがどうしても気になりました。

なぜかというと、response rateというのは「奏功率」でがんがどの程度小さくなったかによって「抗がん剤が効いたかどうか」を評価する用語で、きちんと定義された言葉だからです。

 

固形がんの奏功率については、RECISTというガイドラインによって定義されています(日本語版はこちらです→固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン

薬剤師のためのがん治療用語というサイトの画像がわかりやすかったので引用します。

確かに、腫瘍が小さくなる=抗腫瘍効果ありと言えるので、tumor response rate =抗腫瘍効果と言えるのかもしれません。

ただ、上記のガイドライン日本語版にも次のように記載があるように、奏功率だけが抗腫瘍効果を決定付けているわけではないと思います。

本改訂ガイドラインの主たる目的は、第 II 相試験のエンドポイントとしての、客観的な腫瘍縮小効果の使用について解説することである。
状況によっては、「奏効率」が新規薬剤や新規レジメンの抗腫瘍効果を評価する方法として最適ではない場合がある。奏効率が最適ではない場合、「無増悪生存期間(PFS)」や、ある特定の時点での「無増悪生存割合(proportion progression-free)」が新規薬剤の生物学的効果に関する最初の結果を示すのに適切な代替指標となる可能性がある。

固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン p.14-15より引用)

上記の文章では、がんがどれだけ小さくなったかの「奏功率」ではなく、どのくらいの期間がんが進行せず安定した状態であるか(無憎悪生存期間)によって抗腫瘍効果を評価することもあると書かれています。

ですので、厳密には抗腫瘍効果の評価方法のひとつとして奏功率(response rate)があり、それを抗腫瘍効果としてしまってよいのだろうか、と思ったのです。

ただ、同じように使われている例はあるようですし、そんな細かいこと考えてたら仕事にならない!のかもしれません。

 

妙なところにこだわりがちな初学者(私です)は、素直にイートモを参照しましょう。

イートモは実際の治験関連文書の対訳集ですので、今回の対訳学習時でも似たような文章はだいたいヒットします。

 

tumor response rateで検索すると、11件ヒットしました。

画像をクリックすると拡大します。

オレンジ色の枠で囲った部分は、今回の文書に近いですね。

tumor response rateは「腫瘍奏功率」と訳されているのがわかります。

ちなみに下のオレンジ色部分の右側の○に矢印をつけていますが、クリックすると対訳の中の用語の説明が表示されます。

この部分は「無憎悪期間」に対する説明でした。コンパクトに説明がされているので役に立っています。

 

言葉の使用頻度だけでみれば、「腫瘍奏功率」は「抗腫瘍効果」という言葉に比べたら圧倒的に少ないです。

ただ、tumor response rateの訳としては「腫瘍奏功率」の方が正確なのではないか、と思いました。

 

「逆翻訳できる対訳」のすごさ

イートモに収録されている対訳は直訳感がないのにとても自然です。

かつ、とても忠実に訳されています。

 

これについて、今まではただ「プロはすごいな」としか思っていなかったのですが、先日の成田さんのブログ記事を見てそのすごさの理由がわかりました。

イートモ対訳はセンテンスベースで主観を除いて作成しています。

こちらの記事の中に、イートモの対訳は「和訳をバックトランスレーションしたときに、オリジナルの英語に近くなるように英文と和文を見直している」と書かれています。

 

これを見たときに、そういうことだったのか!と腑に落ちました。

先ほどのtumor response rateの例で行けば、腫瘍奏功率であればtumor response rateと逆翻訳されます(google翻訳で確認済です)。

抗腫瘍効果であれば、anti-tumor effectsになりますね。

 

これは単語ベースの話ですが、今回の対訳素材には、逆翻訳をしたら文章ベースでかなり変わってしまうものがあります。

もちろん、それだけがいい翻訳かどうかと直接関係するというわけではありません。

ただ、英日・日英での対訳データベースにするのであれば、成田さんがおっしゃっているように、利用可能な形でメモリ化するということを、自分自身のメモリ構築でも考えないといけないな、ということを思いました。

 

で、それが今の段階で自分でできますか、と言われたらやはりできません。

ということで今回、プロがそこまで考えて作成されている(しかも作りっぱなしではなくて常にメンテナンスがされている)イートモのすごさを改めて実感しました。

そしてこれが、今回私のような初学者にイートモをおすすめする理由です。

 

まとめ

「治験翻訳で仕事を得ようと思っている方は是非イートモの購入をご検討ください」

ということをお伝えするために、実際に初学者が体験したことを元にして長々書いてきました。

 

画面コピーなど、ソフトの雰囲気を知りたいかたは是非過去記事をご覧ください。

医薬英語対訳検索ソフト・イートモ 導入1週間時点での使い方こんにちは、asaです。 イートモを購入してから1週間・・・がまだ経過していないくらいなのですが、 既に「買って良かった!」と日々そ...

 

といっている私、まだ仕事どころかトライアルも受けていない状態です。

次の記事は「イートモのおかげで医学翻訳のお仕事頂きました!」の予定です。

coming soon ! てことで、頑張ります。

 

*イートモ公式サイトはこちらです。