先週、登録先の翻訳会社からスタイルガイド等の書類をいただきました。
基本的な仕様はJTF日本語標準スタイルガイドに準拠し、そこに独自の仕様がいくつか、さらに個別案件・クライアント別に指示がある、といった感じでした。
さて、これをどうやって漏れなく、かつ速くチェックできるだろうかと考えました。
結論から言えば、「試行錯誤しつつ、いろんなツールの特徴を生かして使い分ける」しかないなというところに落ち着いたわけですが、今日はそこに至るプロセスを少し書いておきます。
当初案:働き者のJust Right!に頑張ってもらおう
JTF日本語標準スタイルガイドの内容を見て、当初は引っかかりそうなところだけ、文書校正ソフトのJust Right!にJTF日本語標準スタイルガイドの内容を反映しようかと思っていました。
Just Right!はなかなかにお高いソフト(Amazonのリンク)で、えいやっと購入したものです。
ただ、多機能で一度に誤字脱字、表記揺れや自分が登録した「要注意単語」などがチェックできるので、これは買って良かったと思っています。
ツールをいろいろ使い分けるより、一本化した方がメンテナンスも楽なのでは?という思いもありましたが、「元を取りたい」という貧乏根性も正直ありました。
そんなこんなでいくつかリストアップして登録しようと思ったときに、ふと思いました。
Just Right!の校正って、そもそも何に基づいているんだろうか、
JTF日本語標準スタイルガイドの内容と実は重複しているのでは?と。
ちなみに、JTFのスタイルガイドは下記を参考にして作成されています。
●常用漢字表(http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/pdf/joyokanjihyo_20101130.pdf)
●外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第3版(https://www.jtca.org/standardization/katakana_guide_3_20171222.pdf)
●送り仮名の付け方(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19730618001/k19730618001.html)
●漢字とひらがなの使い分け
これについては書籍しかないようです。
日本語スタイルガイド 第3版(付録1 漢字とひらがなの使い分け)
これに対して、Just Right!はどうかというと・・・
実はマニュアルなどいろいろ見ましたが、探しきれませんでした。
「送り仮名の付け方」については、校正にかけた時に出るエラーメッセージから、スタイルガイドと同じものを参考にしていることが確認できました。
次案:JTFスタイルチェッカーがあるじゃないか
やっぱり、既存のものを使おう。
JTF日本語標準スタイルガイドには、いくつかそれに準拠したスタイルチェッカーがあります。
一番お手軽な、ブラウザ上で操作できる「JTF日本語スタイルチェッカー」を試しました。
懸念事項の「漢字とひらがなの使い分け」あたりはかなり拾ってくれるので(もちろん全てではありませんが)、十分使えると思いました。
「JTF日本語スタイルチェッカー」とJust Right!、そしてワードの校正機能も併用すれば、ほぼカバーできるのではないかと考えています。
有無を言わさず置換してほしいときもある
Just Right!はとても良いソフトなのですが、一発で置換はしてくれません。
事前にある言葉を登録しておいて、変換候補をクリックしたらその言葉が全て変換されますが、どうしても置換までワンステップ必要になります。
置換したい用語が多いときは、効率的ではありません。
こういうときにはマクロの出番ですね。
以前、見よう見まねで作った秀丸の置換マクロを使おうと思っていた矢先、スタイルガイド関連のビデオセミナーでとってもいいソフトが紹介されていました。
(ビデオ内で、ソフトについてあまり口外することを推奨されていなかったので、ここでもそのものズバリの紹介は控えます。一発で置換するソフトです)
受講生で気になる方は、1480号(翻訳スタイル遵守に役立つソフト)を是非ご覧ください。
10分ほどの短いビデオです。
特に複数のクライアント用に異なる置換リストを作成する必要があった場合、自前でマクロを作成するよりも、断然効率が良いのではないかと思います。
まとめ:使い分けの前に、まずは使ってみよう
「これ1つで、あれもこれもできます!」
洗剤でもツールでもなんでも、多機能のものって、魅力的ですよね。
でも、ちょっと極端な話ですが、例えば刺身にするにはアーミーナイフを使うより、刺身包丁を使った方が断然使い勝手はいいわけです。
とはいえ、用途にあわせて包丁を用意していたら、一体何本用意したらいいのか・・・できることなら万能包丁1本でなんとかしたい、という話になりますね。
このあたりは、自分にどんな包丁が必要なのか、実際に料理をしてみないことにはわかりません。
今はトライアルを題材にいろんな包丁を試しているところです。
「料理の腕前」ももちろんあげていかないといけませんが、最適な調理器具を選択するのも一つのスキルだと思っています。
チェックツールに限ったことではありませんが、果物ナイフで一生懸命肉を切るような無駄な努力をしていないか、振り返りつつ進んでいきます。