こんにちは。
昨日、翻訳学習中にこんな言葉に出くわしました。
epidural or spinal hematomas
薬の添付文書の警告文です。この薬を服用すると、「epidural or spinal hematomas」が起こる可能性がある、ということです。
epidural hematomaは「硬膜外血腫」と辞書に載っていますし、検索でもヒットするのでよいとして・・・
spinal hematomaはそのままでは出てきません。
spinalを辞書で引くと、脊髄の,脊柱の,脊椎の・・・などと出てきます。
検索すると「脊髄血腫」「脊椎血腫」は使われているようです。
さて、どうしましょうか。
そもそも、脊髄と脊柱と脊椎の違いは?
脊髄、脊柱、脊椎。
脊椎は背骨で、脊髄はその中の物質で、脊柱は何だっけ?
よくよく考えたら、そもそもこの3者の区別が曖昧でした。
違いを確認するのに、こちらの亀田病院のポータルサイトの説明がとてもわかりやすかったです。
脊椎・脊髄の病気(脊椎と脊髄の解剖学)(亀田グループ ポータル)
上記のサイトをもとにちょっと違う角度で違いをお話してみます。
こちらが、私たちが通常「背骨」と呼んでいる部分です。

(出典:http://www.rakuwa.or.jp/otowa/shinryoka/seikei/sekitsui_shikumi.html)
いくつかのパートに分けられていますが、この背骨全体を「脊柱」といいます。
「脊柱」を建物全体に例えると、「各フロア」は「椎骨」と呼ばれる部分に当たります。
上の図の左側で色分けされている通り、「各フロア」は商業部分、オフィス部分、居住部分のように区分があります(上から頚椎、胸椎、腰椎、仙骨)。
では脊椎は何かというと、建物全体のこともその一室のことも「マンション」というように、脊柱、椎骨どちらの意味でも用いられる言葉です。
最後に脊髄ですが・・・
建物の内部を通っている電気・通信ケーブルのようなものでしょうか。
例えがちょっと苦しいですが、位置関係としてはおおよそこんな感じですね。
脊髄血腫か、脊椎血腫か
ざっくりと脊髄、脊椎、脊柱について把握したところで、spinal hematomaに戻ります。
hematoma(血腫)は、出血が起こり組織内に血が貯まってしまうことを指しています。
脊椎と脊髄のもう少し詳しい位置関係はこちらです。

(出典:http://rad-base.com/?p=251)
脊髄には血液が流れていますので、その血管から出血が起きて脊髄内やその外のくも膜に血腫ができる・・・と考えれば「脊髄血腫」の方がしっくり来る感じもします。
この理解を踏まえて、もう少し調べて最終的に「骨髄血腫」としました。
「もう少し調べた」の内容は、「ちゃんとした所が使っているかどうか」です。
権威にすがる、というやつですね。
今回のように訳語に困るときには、恐らく皆さんその分野の学会のwebサイト上の用語集などを参考にされると思います。
私も今回、血液関連の学会のサイトをいくつか見たのですが、用語集はあっても探している言葉は見つかりませんでした。
参考までに、日本血栓止血学には用語集があります(https://www.jsth.org/glossary/)。
ではどの権威にすがったのかというと、いつもお世話になっている日本循環器学会の用語集でした。(http://www.j-circ.or.jp/yougoshu/)
この用語集で、「脊髄血腫」と出ていて、政府の資料でも使われているのが確認できたのでこちらで問題ない、と判断しました。
まとめ
ちょっとややこしい脊髄、脊柱、脊椎。
脊柱は背骨そのものを指し、脊椎は背骨そのものや背骨を構成している椎骨を指します。
そして脊髄は、脊椎の中を通る中枢神経です。
位置関係を把握できれば、自信を持って訳語確定できますね。
あとはこれを30秒くらいでできるようになれば良いのですが・・・勉強あるのみですね。