日々の学習記録

「trace」の訳出過程をトレースする

料理の前に、手持ちの材料の確認を

加速度センサ関連の明細書の翻訳をしていて、

実は非常に基本的な単語の訳出に苦労していました。

それが、「trace」という単語です。

 

一文を挙げます。

The drive component includes at least one piezoelectric trace sandwiched at least partially between two electrical traces.

US20120192649A1より) 

下記の図で、上部にある黄色の部分がpiezoelectric trace、それを上下から挟み込んでいる狭い部分がelectrical tracesです。

側面からの図です。同じく、真ん中の黄色がpiezoelectric trace、それを上下から挟んでいるのがelectrical tracesです。

ただ、挟み込んでいる部分がelectrode layerと呼ばれている場合もありました。

 

「trace」という言葉を一旦置いておいて

機能からこの部分の名称を考えた場合、

「圧電素子を電極で挟み込んで、圧電素子に電圧を印加して変形させる」ので、

piezoelectric trace=圧電層、圧電部、圧電膜、圧電素子

electrical trace(s) = (上部・下部)電極、電極層

あたりだと思いました。

関連する日本語明細書を読んだ時に、こういった用語を使っていたからです。

 

でも、traceにそんな意味があるのだろうか?と、まずは辞書を調べました。

跡、痕跡、影響、結果。掃引線・・・

どうもしっくりくるものがないけれど、要するに「電気の道筋」という意味だから

「配線」が一番近いのだろうと思い、いろいろと調べました。

 

色々の中身は、

  • 「配線 trace 加速度センサ」などでgoogle検索、traceと配線の関係を知る。
  • 「トレース 加速度センサ」でJ-platpat内を検索し、図面や説明文を見ながら関係性をつかむ。
  • “electrical trace” google patentsなどで検索し、原文側の使われ方が一致しているか見る

などです。

 

肝心な部分をだいぶ端折ってしまいますが、この調査の過程でtraceが配線であり、

また場合によっては「トレース」とそのまま使用されることがわかりました。

 

実はJ-platpat内を「電気トレース」で検索すると、

海外の出願人の明細書ばかりがヒットします。

それもあって、日本では少なくともこの文脈では

「電気トレース」ではなく、何か違う言い方をしているに違いないと思い、

かなり時間をかけて調査してしまいました。

 

あらかた調べた後で、辞書で再度traceを検索した時に衝撃の事実に気付きました。

2 n. a ~ 形跡[痕跡(コンセキ), 跡], 追跡; a ~ 極微量; a ~ 図面[線, 写図, 敷写し, 透写]; a ~ (自動記録装置の)記録, (測定値のモニター画面表示の)パターン; a ~ 《電気》(プリント配線基板の一本一本の)線[配線, トレース, パターン] *プリント配線基板の a pattern が回路全体の形を意味するのに対し, a trace は一本一本の線[配線]を意味する. しかし日本の技術者は, いずれもパターンと呼んでいる. (ビジネス技術実用英語大辞典V6 より)

あの・・・辞書にバッチリ載ってるじゃないですか。何やってんですか。

調査当時、このページを見ていなかった

(もしくは、見ていたけど気付かなかった)んです。

 

辞書をまず丹念に調べること。

これは、一流の特許翻訳者になるためのマル秘レシピの基本のきですね。

「翻訳スキーム」ノートのはじめの方に、

「辞書を隅々まで引く」とでかでかと書いておきました。

 

今回のtraceについては、この文脈では「配線」はやはりそぐわないので、

そのまま「トレース」とした方が良いと結論を出しました。

 

ちなみに公開訳は「電気トレース」「ピエゾ電気トレース」となっています。

“electrical”と原文にある限り、

やっぱり「電気」トレースにする必要があるんでしょうけど、

「電気トレース」だと「電気ヒートトレース」の意味で使われることが多いようだしなあ、

などとどうにもまだ引っかかってますが、

恐らく私の違和感フィルタはどうでもいい所に反応しすぎているんだろうな、と思います。

 

学習記録

11/8(木)の学習記録
項目: 対訳学習(公開訳との比較)
目標: 6h40m  実績:6h10m
メモ: 残業40m    

11/9(金)の学習計画
項目: 対訳学習(公開訳との比較)
目標: 6h