ミス対策

1/26 誤訳メモ1:solutions or suspensions in aqueous or non-aqueous liquids

少し前に、3Dプリンタで医薬品を作製する方法に関する特許明細書を翻訳しました。

その際の翻訳ミスについて再度見直しをした記録です。

  

明細書の概要

原文:WO2018046642A1

公開訳: 2019-532921

概略:粉末に液体を噴射し、放射線により反応させ固化させることで造形物(医薬品)を作製する方法について。下記のMMJは液体射出装置(Multi Material Jet)。

 

訳文の検討

青字部分の係り受けミスのみを取り上げます。

原文:

Pharmaceutical formulations usable for oral administration are, for example, capsules or tablets; powders or granules; solutions or suspensions in aqueous or non-aqueous liquids; edible foams or foam foods; or oil-in-water liquid emulsions or water-in-oil liquid emulsions.

当初の自分の訳:

経口投与に使用可能な医薬製剤は、例えば、カプセル又は錠剤、粉末又は顆粒、溶液又は水性懸濁液若しくは非水性懸濁液、食用泡(edible foam)又は泡食品(foam food)、又は水中油型液体エマルション若しくは油中水型液体エマルションである。

公開訳:

経口投与に用いることができる医薬製剤としては、例えば、カプセル剤又は錠剤、散剤又は顆粒、溶液又水性若しくは非水性溶液への懸濁液、食用フォームまたはフォームフード、又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンがある。

訳出当初考えていたこと

「in aqueous or non-aqueous liquids」である「solutions or suspensions」(水性又は非水性液体中の溶液又は混濁液)とまず考えた。

 

ただ、「水性又は非水性液体中の」懸濁液(suspension)はわかるが、「水性又は非水性液体中の」溶液(solution)はおかしいと思った。

溶液はすでに混合されて一体化されているものなので、「solutions in aqueous or non-aqueous liquids」であると、あたかも「水性又は非水性液体」の中に「溶液」という別の液体が存在することになると思ったから。(通常はaqueous solution、non-aqueous solutionと表記すると思う)

 

”solutions or suspensions in aqueous or non-aqueous liquids”で検索しても実質googleで3ページ目までしか出ないので、あまり馴染みがない表現だと判断した。

”solutions in aqueous liquids”としても、5件程度。

 

そのため、「in aqueous or non-aqueous liquids」はsuspensionのみにかかっていると考え、「溶液又は水性懸濁液若しくは非水性懸濁液」とした。

 

公開訳との比較時に考えたこと

公開訳も私と同じように区切っている(非水性「溶液」への懸濁液、となっているけれど)が、再度考えた。

suspensions in aqueous or non-aqueous liquidsについて。

訳出当時、solutionがliquidの中にあるのはおかしいと思ったが、suspensionも「液体中に固体粒子が分散した系、つまり液体」なので、よくよく考えるとsolution in liquidsがおかしいのならsuspension in liquidsも同様の理由でおかしいことになる。

「水性液体中の溶液」という言い方があるのか、改めて検索する。

「水性液体中の溶液,4C,懸濁液」でJ-platpatで全文検索する。結果は1614件。外内のものがほとんどだが内内のもいくつか。

例えば、

特開2016-141697 学校法人東京電機大学
経口投与に適した医薬製剤としては、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、散剤、顆粒剤、又は水性若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液、又は水中油型若しくは油中水型の液体エマルジョン、エリキシル剤若しくはシロップ剤の形態であってよく、これらの製剤は、所定量の修飾ヒアルロン酸を有効成分として含む。

特開2017-178814 シーシーアイ株式会社
例えば、経口投与に好適な本発明の剤形は、カプセル、サシェ(sachet)、丸薬、錠剤、ロゼンジ(味付けされた主薬、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント、を用いる)、粉末、顆粒の形態でもよく、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、(以下略)

 

「液体中の溶液、混濁液」という使い方はされている。

solutions or suspensions in aqueous or non-aqueous liquids;
この一文はセミコロンでひとかたまりになっている。関連した一文と見るべき。

「水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液」が正しいと判断する。

 

*公開訳は違っているが、同一出願人(メルク)の他の特許でも同じ記述がある。

特開2018-188452
経口投与に適合させた医薬処方物を、例えば、カプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液;食用泡(edible foam)または泡食品(foam food);あるいは、水中油滴型液体エマルションまたは油中水滴型液体エマルション、などの別個の単位として投与することができる。

WO2014/146747A1
Pharmaceutical formulations adapted for oral administration can be adminis¬
tered as separate units, such as, for example, capsules or tablets; powders or
granules; solutions or suspensions in aqueous or non-aqueous liquids; edible
foams or foam foods; or oil-in-water liquid emulsions or water-in-oil liquid
emulsions.

 

誤訳の原因と対策

原因

訳出開始時にはsolutions and suspensions をひとつのまとまりとして見ていたが、「液体中の溶液はおかしい」という思い込みで判断し、そのような表現が使われているかどうか、裏取りをしていなかった。

 

対策

(1)少しでも気になったら(違和感があれば)Trados上で印を付けメモしておき、後で再度検討する→翻訳スキーム表に追記

(2)同一出願人で似たような表現がないか検索する→翻訳スキーム表に追記

(3)機械的な対策として、
・秀丸上でセミコロンを強調表示する(まとまりを意識するため)

・solutions or suspensions in aqueous or non-aqueous liquidsとsolutions or suspensionsをそれぞれMultiterm、JustRight!に登録する