ミス対策

1/26 誤訳メモ3: (substances) that form surfaces recognized by the immune system

誤訳メモ1、2と同じ素材からです。

少し前に、3Dプリンタで医薬品を作製する方法に関する特許明細書を翻訳しました。

その際の翻訳ミスについて再度見直しをした記録です。

  

明細書の概要

原文:WO2018046642A1

公開訳: 2019-532921

概略:粉末に液体を噴射し、放射線により反応させ固化させることで造形物(医薬品)を作製する方法について。下記のMMJは液体射出装置(Multi Material Jet)。

 

訳文の検討

本3Dプリンタで使用できる有効成分の例が列挙された一文です。

原文

Examples of an active ingredient that may be used in the process of the present inventions are insulin, heparin, calcitonin, hydrocortisone, prednisone, budesonide, methotrexate, mesalazine, sulfasalazine, amphotericin B, nucleic acids, or antigens (peptides, proteins, sugars, or other substances that form surfaces recognized by the immune system, either produced, extracted, or homogenized from tissue, an organism or a virus).

当初訳

本発明のプロセスで使用できる有効成分の例は、インスリン、ヘパリン、カルシトニン、ヒドロコルチゾン、プレドニソン、ブデソニド、メトトレキセート、メサラジン、スルファサラジン、アンホテリシンB、核酸又は抗原(組織、生物、若しくはウイルスによる生成、抽出若しくは均質化のいずれかが行われ、免疫系に認識されることで表面を形成するペプチド、タンパク質、糖質、又は他の物質)である。

公開訳

本発明のプロセスで用いられうる有効成分の例としては、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデソニド、メトトレキサート、メサラジン、スルファサラジン、アムホテリシン B、核酸又は抗原(ペプチド、タンパク質、糖又はその他の物質であって、免疫システムによって認識される表面を形成し、組織、微生物又はウィルスから生成、抽出又は均質化されたもの)である。

訳出当初考えていたこと

何を考えていたのか覚えていない(特に何も考えていなかった=置換モードだった)。

 

公開訳との比較時に考えたこと

「form surfaces recognized by the immune system」は素直に訳せばそのまま「免疫系によって認識される表面を形成」となる。

なぜ「免疫系に認識されることで表面を形成する」とこじらせてしまったのか。

英語の解釈を間違えたとしても、訳文が意味不明であればどこかが誤っていることに気づくはず。

この文章の意味が理解できていなかった(抗原提示についての理解があいまいだった)。

 

誤訳の原因と対策

原因

文章の意味が理解できていないことを無視していた。

細胞表面(MHC)に抗原(ペプチドなど)を提示して、それによってT細胞を活性化させて免疫反応を引き起こす、という抗原提示から免疫反応までの流れをざっくりと理解していた(はず)だが、この文章がそのことを言っていることに、訳出当初は気づいていなかった。

気づかなかった原因は、

(1)免疫関係の知識が少ない、関連の明細書などを読んでいないからフックがかからなかった

(2)訳出後、あるいは見直し時に自分の訳文の意味が通るかを検討していない(考えていない)

 

対策

抗原提示に関しては再度図解化して理解した。

ただ、同じように「なんとなくの理解で訳していて、誤訳していても気づかない」という間違いを犯さないためには、

(1)訳文だけ通して読んで意味がわかるか(図解化できるか)を確認すること

 

そして、今回のように文法上の単純な解釈ミスをすることがあるので、

(2)PAT-Transerを並行して使用し、解釈が間違っていないか確認すること