化学・物理

反応型ホットメルト接着剤と架橋構造

いいとこどり

昨日のホットメルト接着剤の続きになります。

 

熱で溶かして冷えたら固まるホットメルト接着剤、

便利なんですが耐熱性に問題がありました。

 

今日は、耐熱性を向上させてより広い用途で使えるようになる方法の

一つをご紹介します。

それが、「反応型ホットメルト接着剤」と呼ばれるものです。

反応型ホットメルト接着剤とは?

固形のホットメルト接着剤を熱を加えて溶融し、冷却固化させる。その後空気中の水分や紫外線などと反応させることで更に固化を進める方法

昨日、接着剤は冷却固化の方法で4つに分けられるという話をしました。

(コニシ株式会社 接着読本より)

反応型ホットメルト接着剤は、③熱で溶かして冷やして固化+②化学反応を起こして固化の合わせ技となります。

下記のように、ホットメルト接着剤の持つ高速接着性を維持しつつ、

反応型接着剤の持つ接着信頼性(強度・耐熱性・耐久性)を向上させています。

 

積水フーラー株式会社HPより)

見事な合わせ技ですね。

 

反応型ホットメルト接着剤の接着原理とカチコチ頭

なるほど。2つの接着方法の融合、確かにすごい。

でも、何か私はしっくりこないものを感じていました。

 

それは、

「ホットメルト接着剤に使われている高分子は熱可塑性なのに、架橋するの?」という

疑問でした。

どういうこと?とお思いになる方がほとんどだと思います。

 

私の頭の中では熱に溶けることと、架橋の関係は下記のように単純構造化されていました。

熱可塑性樹脂:熱で溶ける=架橋しない=熱を加えたら元に戻る

熱硬化性樹脂:熱で硬化する=架橋する=元に戻らない

それで、熱可塑性は架橋しないのでは?と当初疑問に思ったのです。

 

今回のホットメルト接着剤は、空気中の水分や紫外線などと反応できる官能基を持った熱可塑性高分子が使用されています。

この官能基の代表は下記の緑色部分のイソシアネート基です。

「イソシアネート基」の画像検索結果

三協化学株式会社HPより)

イソシアネート基が空気中の湿気に含まれるOH基と架橋反応を起こし、3次元の立体網目構造を形成します。

架橋構造が複雑に、密度が高くなるほど高温でも分子がバラバラになりにくくなります。

 

また架橋が起こると、そもそも架橋点の物性がもとの物質と変わってしまいます。

すると可塑性が失われ、例えば本の背表紙にアイロンをかけて熱を溶かすように、固化した状態のものを再度溶かすことはできなくなります。

 

今回の「反応型ホットメルト接着剤」の成分で言えば、「熱可塑性だけど最終的に架橋して可塑性が失われる」ことになります。

なので今回、「熱可塑性」やら「熱硬化性」などの言葉の分類に囚われずに、どういう官能基がくっついていて、どんな反応が起こるのかに注目すべきだなと思いました。

 

今回調べていく中で、面白いなと思ったのは架橋密度による物性の違いです。

密度が高ければ高いほど強度はあがるわけですが、柔軟性は低くなります。

 

「ほどほど」にすると、例えばおむつなどに使用される高吸水性ポリマーのように、

水分を大量に取り込んで維持することができます。

下記のようなイメージです。

これも、架橋密度が高いと柔軟性がなくなり効率よく水分を取り込むことができません。

(社)日本化学会HPより)

この化合物の特徴を決めている物性は何だろうか、を考えながら明細書を読めれば、「発明の肝」も見えてくるのかなと思います。

接着剤から人生を学ぶ

今回の反応型ホットメルト接着剤でメジャーだったのは、上に挙げた通り水分などと反応性が高いイソシアネート基を持つ、ウレタンプレポリマーを材料とするものでした。

これは、ポリウレタンの成分のひとつで、合成後から徐々に反応が始まります。

長く放置していた新品のスニーカーの底が、いざ履こうと思ったらボロボロになっていた・・・という「ポリウレタンの加水分解」のお話を聞いたことがあるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

「水分などとの反応性が高い」のはこの場合はポリウレタンの短所ではあるのですが、

反応型ホットメルト接着剤では、この性質を逆に活かしていることになりますね。

 

短所も適材適所で長所になる。

今回は、接着剤に物事の向き合いかたを教えてもらいました。