バイオ・医薬

光学異性体と胃酸分泌抑制剤・オメプラゾール

昨日から「岡野の化学」2週目をまわしつつ、明細書を読む学習を進めています。

今日はその学習メモです。

「岡野の化学」での学習モードの時は、何かしら毎日「昨日やったこと」をアウトプットするようにします。

今日は光学異性体について、医薬品との関係からまとめます。

 

光学異性体と医薬品

光学異性体とは、立体異性体(分子式が同じで立体的構造が異なる)の種類のひとつです。

立体的な配置が異なることで、「光をどちらの方向に曲げるか」という旋光性が異なる物質のことを指します。

構造的には、下のように鏡映しの構造になっているため、鏡像異性体またはエナンチオマーとも言われます。

wikipediaより

 

光学異性体には、立体的配置の違いによりR体とS体が存在します。

そして、R体とS体の違いにより異なる性質を持ちます。

 

医薬品でいえば、有名なのはサリドマイドですね。

R体は本来の薬効としての催眠作用がありますが、S体には催奇形性があります。

そのため、サリドマイドの服用により催奇形性が発現し、胎児の死亡や先天異常が生じたのです。

(出典:http://www.chiral.jp/main/thalidomide.html)

 

サリドマイドのように、R体とS体を持ちそれぞれ性質が異なる(片方のみ薬効が認められる、体内での薬物動態が異なるなど)という医薬品は多く存在します。

次に取り上げる胃酸分泌抑制剤のひとつ、プロトンポンプ阻害薬もそのような医薬品のひとつです。

 

プロトンポンプ阻害薬と光学異性体

「プロトンポンプ阻害薬」とは、胃酸分泌抑制剤のひとつです。

胃酸の分泌を抑え胃のpHをアルカリ性側へ傾けることで、胃潰瘍などの症状を和らげます。

また、ピロリ菌除去のために抗生物質を投与する際、そのままではpH1の強酸である胃によって抗生物質が分解されてしまうため、胃酸分泌抑制剤を投与して抗生物質が効くpHに調節するためにも用いられます。

 

代表的な胃酸分泌抑制剤に、オメプラゾールという薬があります。

次のように、S体とR体が存在します。

(S体とR体を等量配合した「ラセミ体」として提供されます)

wikipediaより

 

体内に取り込まれた薬物は代謝酵素による代謝を受けますが、S体とR体の代謝のされ方に違いが見られます。

S体の方が、肝臓での代謝を受けにくいため血漿中の薬物濃度が上がりやすく、R体よりも薬効が強く出ます。

また、R体は主な代謝酵素であるCYP3A4の代謝機能に個人差が生じます。

この個人差は遺伝子多型といい、アルコールの分解濃度に個人差があるのと同じように、遺伝学的にCYP3A4の代謝機能を欠くタイプが存在することにより生じます。

 

代謝酵素の働きが弱いと代謝を受けにくくなるため、薬効成分が体内に長く残る、つまり同じ薬でも長く効くことになります。

薬効に個人差があると薬としては使いにくくなります。

 

以上のことから、S体のみを配合した薬(エソメプラゾール)が開発されました。

 

ちなみに、「それができるのなら、サリドマイドもR体だけに安全なのでは」と思ったのですが、R体だけにすることは可能でも、体内でS体が生成される(ラセミ化する)ようです。

 

読んだ明細書・その他メモ

肝心の特許明細書についてですが・・・

プロトンポンプ阻害薬の薬効や安全性を高めるために、光学異性体の特性を利用したりしているのではないか、という視点で調査を開始しました。

より安価で安全に、高い収率でS体のみを提供する目的の明細書(2019-194219)がありました。

面白そうだと思い読み始めたのですが、実はまだ消化できておらず、ペンディングしています。

合成反応や製造方法の箇所で不明点が多くイメージできていないことが原因なので、もう少し補充してからもう一度読みます。

 

その他、薬としての安定性を高めるために、添加剤の配合材料を工夫するなどの明細書を読みました。

 

昨日の学習は、「とても楽しかった」のですが取り組みとしては要修正です。

というのも、どちらかというとメディカル方向(プロトンポンプの仕組み、その他の胃酸抑制剤の種類や作用機序など)に大きく脱線してしまい、じっくり読んだ明細書は3件だったからです。

今回時間を取って勉強しているのは、明細書を早く正確に読めて翻訳できるためです。そこを忘れてはいかんぞ、と自分に言い聞かせました。

昨日明細書を読んでいても、やはりつっかかるところがまだ多い(上記の合成反応や実施例の実験方法など)ので、そのあたりを明細書を参照しつつ埋めていきます。

 

岡野の化学1回目の開始は2018年2月でした。

もう2年近くも前のことです(はやい)。

 

当時のログですが、どうも当初から異性体には興味があったようです。

構造異性体にはまる化学・物理の基礎固め、1日目です。 祝日万歳。誰にも邪魔されず勉強に専念できるっていいですね。 (私の場合、邪魔する人はそもそもいな...
立体異性体月曜の構造異性体に続き、昨日はもう一種類の大分類、立体異性体について学びました。 構造異性体 分子式は同じ。構造式が異なる。 ...

この当時は、このくらいの理解で終わっていました。

光学異性体の性質ですが、「ほとんど同じ」ということは少しは違いがあるわけで、その違いに注目した研究が盛んなようです。関連特許もキーワード検索してちらっと見ただけですが、フィルム関係などがヒットしました。

今回は意識してできていないのですが、当時の記事を見ながら足りないところ・間違っているところを補充・訂正していこうと思います。

 

知子の情報も、まず検索してみて当時の情報を上書きしたり追記したりしています。これもなかなか楽しい作業です。

 

ちなみに、毎日夜「今日やったこと」の復習をしていますが、その際に「知子の情報」も当日入力分をざっとみています。

「新規入力分」は新しい方から順にカードをめくっていけばよいのですが、追記した分については探すのが面倒になります。

 

私は知子のカードの索引に、追記した日付を追加しています(手作業なので、忘れなければ、ですが)。

 

こうして、検索→索引検索で検索すると、「今日入力した or 今日追記した」もののみヒットするので効率良く復習ができますよ。

新規入力分について、もしデフォルトで索引に日付が入らない方がいらっしゃれば、次の画面の「自動日付索引」にチェックを入れれば入ります。

(下の図の追記分の日付(2019年12月23日)はその下の「日付(D)」を手動でクリックして入れています)

この状態で検索画面から検索した日付を入れて(当日なら「日付入力」をクリックすると入ります。入力した日付は変更できます)、索引検索<高速>でその日付が入っているカードのみヒットします。

日付だけでなく、索引は入力を工夫すれば何かと使えると思いますよ。