化学・物理の学習記録

ガラス転移点とミクロブラウン運動

物性。

それは、物質の性格のことです。

粘り強いとか、見た目強がってるのに心はボロボロだとか。

目に見えない変化が蓄積して、あるところでがらっと人が変わるように性質が変わってしまうことがあります。

今日は物性を示す重要な指標のひとつ、「ガラス転移点」について復習したメモとなります。

 

ガラス転移点・ガラス転移温度とは

ここでは高分子のガラス転移を取り上げます。

 

ガラス転移点とは、物質がガラス状態になる温度のことを示しています。

Tg(Glass Transition Temperature)とも言いますね。

 

実はこの概念、「わかっているようで実はよくわかっていない」ものの一つでした。

ガラス状態ってどういう状態か、なぜ物性ががらっと変わってしまうのか。

これがわからないと、「ガラス転移点=Tg=固くなる温度」でなんとなくわかった気になってしまうのですよね。

 

ということで、もういちど復習しました。

「結晶・非結晶」の違い、そして「ミクロブラウン運動」とガラス転移点との関係について理解するとわかりやすくなりました。

 

高分子は結晶構造の有無で、結晶性高分子と非晶性高分子に分けられます。

 

結晶性高分子は同じ方向に整列している結晶化部分を持つ高分子で、ランダムな配置の非晶性部分も混在しています。

(出典:https://www.kda1969.com/words/words_pla_6h_04.htm)

 

そして、ガラス状態というのはこのランダムな構造の非晶性部分を持つ物質が、ガラス転移点以下で固まっている状態のことを指しています。

でも「固まっている」のなら、通常私たちが使う「固体」とどう違うのでしょうか。

 

「固まった状態」から温度を上げたときの物質の挙動の違いが、「ガラス状態」と「固体」の違いになります。

 

氷から水になるように、温度を上げると融点で固体は液体に変化しますね。

ガラス状態である物質は、ガラス転移点より高温になると、液体になる前に弾性のあるゴム状態へと変化します。

逆に言えば、ゴム状態だったものがガラス転移点より低温になると固くなり弾性がなくなります。

ガラス転移点を持つ物質は、ガラス転移点を境に物性が大きく変化します。

 

結晶性高分子は結晶部分が溶融する融点がありますが、非結晶性高分子には明確な融点はありません。

(出典:http://enpla.jp/enpla/index02.html)

 

ガラス転移点とミクロブラウン運動

非晶性部分を持つ高分子は、ゴム状態という液体と固体の中間のような状態があり、ガラス転移点よりも低温になると固まる、ということがわかりました。

でもなぜ、このような現象が起こるのでしょうか。

それには分子のミクロな挙動が関係しています。

 

通常、物質は温度が上昇すると熱運動が盛んになるため、動ける範囲が広がり、体積が大きくなります。

液体は分子間力の影響もありますがある程度動ける状況で、固体は互いが結合して動けない状況になっています。

(出典:http://www.meteoffice.info/1analysis_folder/pages_neturikigaku_folder/301_folder/3_01.htm)

 

ゴム状態は、固体と液体の中間の状態です。

非晶性高分子では液体のように動くことはできませんが、その場で「ミクロブラウン運動」と呼ばれる熱運動が起こっています。

このミクロブラウン運動が行われることで、弾性というゴムの特性があらわれます。

ガラス転移点以下になると、ミクロブラウン運動はストップするためこの特性が得られなくなります。

つまり、ガラス転移点=ミクロブラウン運動が停止する温度、ということもできます。

 

 

手書きですが、ここまでをまとめると次の通りになります。

 

非結晶性部分を有する高分子は、ガラス転移点を持ちます。

ガラス転移点より低温ではガラス状態(固まっている状態)です。

ガラス転移点より高温の場合、ミクロブラウン運動という分子内での熱運動が起こり、ゴム状態となります。

 

ガラス転移点での物性変化を応用した事例

望む物性を示す製品を作り出すために、ガラス転移点を調整することがあります。

調査するなかで、ガラス転移点を境にミクロブラウン運動が生じることを利用した製品を見つけて、なるほど!と思ったのでひとつご紹介します。

 

DiaPLEXという防水透湿膜です。

ミクロブラウン運動が起こっている時、ガラス状態と比較すると分子間に隙間が生じることになります。

その隙間から汗を水蒸気として逃がし、ガラス転移点より低温になった時には運動が停止するので隙間がなくなり、それにより保温機能を発揮するという製品です。

(出典:https://www.mcf.co.jp/service/diaseries/diaplex.html)

 

どうやって調整するのだろう、と思ったのですが現時点で資料を探しきれていません。

寒い時に発汗した場合はどうなるのだろう、ミクロブラウン運動でどれだけ隙間が生じるのだろう、などなど疑問はつきませんが、こういう発想があるのか、なるほどと思いました。

 

汗は逃がして、雨水は通さない機能性ウェアといえばゴアテックスが有名ですよね。

ゴアテックスは汗(水蒸気)と雨水の直径の違いを利用して、「水蒸気は通れるが雨水は通れない」微細な穴をもつメンブレンで、保湿性と透湿性を両立しています。

「孔(径)の大きさの違い」を利用することも、分離装置や計測装置でも見られる発想ですよね。

 

その他特許明細書でも、物性がガラス転移点を境に大幅に変化することを利用した発明がいくつかありました。

こちらはまだじっくり見れていないので、「これは」というものがあれば別途ご紹介します。

 

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