日々の学習記録

リビングラジカルポリマーとブロックポリマーの明細書

1/21 学習内容

ドラッグデリバリーシステム(以下DDS)を最初の重点学習テーマに設定しました。

DDSそのものに行く前に、高分子ミセルを使用したDDSで用いられることが多いブロックポリマーの作製方法の明細書を読みました。

たまたま同じ出願人の明細書が固まっていたから、比較しやすいかと思ってそうしましたが、結論からいうと材質の違いぐらいしかなかったので学習素材としては選択ミスでした。

読んだ明細書:5件

No       タイトル              出願人
2009-215472 リビングラジカルポリマーの製造方法 京都大学
2019-203086 ブロックポリマー          東洋インキSC
2019-203084 ブロックポリマー          東洋インキSC
2019-206612 ブロックポリマー          東洋インキSC
2019-206613 ブロックポリマー          東洋インキSC

 

リビングラジカルポリマーとブロックポリマー

一番上の明細書に関しては、以下4件の先行技術として載っていたため始めに読みました。

この明細書と残り4件分の違いについてまとめます。

 

リビングラジカルポリマーは、リビングラジカル重合で作製されたポリマーです。

特徴は分子量分布を厳密に制御できることです。

分子量分布が狭いということは、物性として均一なポリマーであるので扱いやすくなります。

末端に官能基を導入すれば、さらに異なる物性を付与できます。

2009-215472で取り扱っている内容は、ポリマーの末端に官能基の導入する方法です(従来はポリマーに極性基があると末端の官能基と反応してしまったが、それを改善)。

 

ただ、リビングラジカル重合は製造プロセスが複雑で、重金属などを触媒として用いるために医療用途などには不向きでした。

ブロックポリマーは、2種類(以上)の異なるポリマーが結合したポリマーです。

ブロックポリマーのよいところは、種類ごとに異なる物性(溶解性など)を持たせることができるという点です。

ブロックポリマーを使用して作製される高分子ミセルは、疎水性、親水性を併せ持つブロックポリマーの性質を利用しています。

 

リビングラジカルポリマーとブロックポリマーを簡単に図示すると次の通りです。上が末端に官能基が結合しているリビングラジカルポリマー、下がブロックポリマーです。

今回読んだ明細書については、ブロックポリマーの分子量分散度(どの程度分子量がばらついているのか)を規定していました。

分子量分散度が狭い(より均一である)ほうが一般的には扱いやすくなります。

ただしあまりに整い過ぎていると、接着剤用途などではかえって接着力不良となるため、今回読んだ明細書は4件とも、ある程度の分子量分散度の高さ(1.25。1が均一)を持たせています。

読んだ4件の明細書の違いは、ブロックポリマーの組合せの違いにより、重合方法が異なっているぐらいで、課題や解決策は全く一緒でした。

 

その他

検査装置、分析装置で見慣れないものが出てくるのでその都度どんな原理で、何を測るのかを確認しています。

今日はNMRと一緒にでてきたMALDI-TOFMSについて少し。

MALDI-TOFMSはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計という長い名前がついています。

試料にレーザーを照射してイオン化させ、そのイオンの飛び具合によって重量を分析する装置です。

モノマーの分子量だけでなく、末端構造だけが異なる物質の質量の違いも検出されるため、末端構造の予測に使用されます(今回の明細書も、この用途で使用されていました)。

(https://www.an.shimadzu.co.jp/ms/tofms.htm より)

 

今日の明細書は、検査方法や重合方法の復習・補強にはなりました。

が、直接DDSの作製方法の明細書を見るべきでした。明日はDDSの明細書を読みます。