仕事の記録

英日特許翻訳案件・1件目の振り返り

特許翻訳(英日)の1件目となる実ジョブを納品しました。

マインドマップにまとめながら案件の振り返りをしました。

その内容をこちらにも抜粋してまとめます。

 

概要と所感

バイオメディカル系の案件です。

ワード数についてはこれまでの対訳学習などを含めても自己最長です。昨年の中国語メインの実ジョブでは、短い案件を数こなしていく形だったので、ここが大きく異なりました。

納期は1件目ということもあり、少し長めに頂きました。

 

終わってみると、納期に余裕は全くありませんでした(あとに述べるトラブルも影響していますが)。

時給換算では、ちょうど600円くらいです。今回に関しては、継続受注を目指してとにかく持ち時間を全部つぎ込んでベストで納品すると決めていたので、恐らく300円台以下だろうと思っていました(去年の実ジョブの初めがそのぐらいだったので)。

これはある意味で予想外でした。やはりボリュームのある案件のほうが「おいしい」のだなと実感しました。

もちろん、この作業スピードではプロとは呼べないのでこれから改善していきます。

 

ベストで納品しましたが、やはり100%ではありません。

納品直前まで迷っていた箇所もありました。

ただ、「今のレベルではこれが限界で、例えあと1週間納期があったとしても1、2%くらいしか訳質は上がらないのではないか」という感覚がありました。

 

納品後は、やりきった感よりも正直、やはり不安が残りました。

何か大きな勘違いをしていないか、それで後工程に迷惑をかけてしまうのではないか、と。

ただ、自分はベストと思って納品したのですから、あとは客観的な評価(フィードバックは頂ける予定なので)を真摯に受け止めて改善していくだけだと気持ちを切り替えました。

 

案件を進めていく中で、達成感も感じました。

初めのちんぷんかんぷんな状態から、内容が理解できて、作業が進んで「納品物」として1件の明細書の翻訳を完成させるという過程にはやはり達成感があります。

なので、次の案件をはやくやりたい。ゼロから納品までのプロセスを楽しみたい、という気持ちもあります。

 

とはいえ、今回の案件、順風満帆ではありませんでした(実務はトラブルがつきものというのはわかっていますが)。

お約束の「突然のパソコンぶっこわれ」も経験しました(復旧しました)。

次に今回の案件でできたこと(よかったと思うこと)、改善点をまとめます。

 

よかった点

大きく分けると、これまでやっておいてよかった、ということと、今回の取り組みでやってよかったと思うことがあります。

これまでやってきてよかったこと

(1)化学・物理の学習

明細書はどれも、程度の差こそあれハイブリッドだと思います。今回はなかなか「オールスター」な感じで楽しい明細書でした。

バリバリのバイオメディカル系の案件ではあったのですが、やはり化学や物理のベースが全く無かった場合、調べ物が膨大になってしまい理解もままならなかったと思います。

今回もかなり難儀した箇所があったのですが(これまでの学習でも苦手にしていたところでした)、それでも、最低限のベースはあったので何とかなった感があります。

 

(2)ツールを一通り使っていたこと

具体的には、Trados、Just Right!、EKWordsなどです。

今回もチェックの過程で「自分では気づけなかったミス」をJust Right!とEKWordsに拾ってもらいました。

その他のチェックも合わせて、つまらない凡ミスはしていないことには自信を持っています。

 

今回、実はシステム上のトラブルに見舞われました。自分ではどうしようもない部分もあり、「これが直らなかったら納品や納期にも影響するな」というものでした。

これについては、復旧しなかった場合の代替案をこちらから提案しました。その時に、Tradosの機能についていろいろと調べました。これも、ある程度使っていたから「こういう機能があるのではないか」とあたりをつけて調べることができました。

 

この取引先やTradosに限らず、「ツールを積極的に使う人かどうか、使えるかどうか」というのは、ひとつの「使える(使いたい)人」であるかどうかの指標でもあるとこれまでも感じることがありました。

なので、今回、このトラブルがらみの対応でかなりの時間を使ってしまいましたが、見方を少し変えれば、「この人は一応ツールには詳しいんだな」というアピールにはなったかと思います。

 

(3)ボリュームのある明細書の対訳学習をしていたこと

以前、24000ワードくらいの明細書を使って対訳学習をしました。

この時は、今回案件を頂いた取引先から仕事を得ることを想定して、長めのものと相応の分野のものを選びました。

この時に学習した内容も大いに役立ちましたが、「このくらいのワード数のものを訳すときの感覚」を事前に得られたのが一番大きかったと思っています。

具体的には、「一応訳せるな」という感覚(ワード数にビビらない)、「どこからどう加速していくか」の感覚です。

案件打診を頂いた時に、この時の感覚と処理スピードなどの記録から、必要日数を割り出してスケジュールを組みました。

そして概ね、スケジュール通りに進めることができました(最初の処理スピードの遅さを見誤っていて焦りましたが)。

 

これらすべて、一言でいってしまうと「講座で勉強していてよかった」です。

元来ケチな私が、お高いツールを導入することもまずなかったでしょうし、理系ガチ多重アレルギーを自力で解消することもできなかったでしょうから。

ディスプレイや椅子などの作業環境も合わせて、いまでは「当たり前」になってしまったことがこうして生きてくるんだな、と改めて実感しました。

 

今回の案件の取り組みでよかったこと

(1)「一緒に仕事をしたい人」になることを最優先に考えた

もちろん、訳質に大きな問題がないことが前提となります。

具体的な行動は、メール返信はとにかく早く、質問は一度でかつ相手に負担がない形で行う、納期予定の連絡をする、指示は遵守、などです。

今のレベルでは、もしかしたら訳質は先方の期待値よりも下かもしれません。それでも、ちゃんと当たり前のことをやれていれば、次につながるのではないかと思っています。

 

(2)翻訳前の作業をじっくりやった

ひとつは、背景知識の獲得です。今回は丸3日、使いました。

少しやり過ぎか、とも思ったのですが、今回に関してはその部分も必要でした。もちろん、時間との兼ね合いがあるのである程度あたりをつけて調べることが大事です。

ただ、「ここまでやる必要はないのかも」と考えている時間があれば、目を通す程度でも見ておいたりとりあえず印刷しておけば、あとでフックがかかるということを今回実感しました。

 

どこから翻訳していくかについて、今回は翻訳前にかなり考えました。

それぞれの部分に何が書いてあるかをつかんで、実施例から取り組みましたがこの選択は正しかったです。

実施例はかなり手強かったので(繰り返しもほぼありませんでした)、わかりやすい(馴染みのある)他の部分からやって少しでもワード数を稼いだ方が気持ち的に楽かな、とも正直思いました。

ですが、やはり先に具体例を理解してから抽象的な部分にいったほうが、案件全体としては理解しやすくなると今回実感しました。

このあたりは案件によるところもあると思いますが、「訳し始める前に明細書全体を俯瞰して、戦略を決める」のは必須だと思います。

 

改善点

これは細かい所を抜きにすれば、一点に集約されます。

「見切り力」を付けるということです。

(細かな改善点については、ここでは割愛します)

 

今回、訳出時のペンディングが多く(実施例部分で2割ほど、他の部分はほぼなし)、さらに、一度調べて自分の中で納得した訳を再度ひっぱり出してこねくり回すことが多かったです。

コメントについても、これは付けるべきか、不要だろうかと延々と悩んだものもありました(コメント付記のおおまかな基準については指示があったので、それに照らし合わせての判断という意味です)。

もちろん、決めつけはよくないですしペンディングにして進める必要もあります。

ただ、いつまでも「どうしようかな」と悩んでいる暇はないので、「自分の中での正解」を出さなくてはなりません。

 

見切りができない(確定できない)ということは、その訳語に対して自信がないからで、自信がないのは、その文を理解できていないからです。

だとしたら、見切りを早くするには、ひとつひとつの文章の理解力を高める必要があり、そのためにはすでに獲得してきた知識や考え方の差(地力)がものをいうのだと思います。

 

今回、コメント以外にも訳出のスタイル(直訳すぎないかどうかなど)で迷うこともありました。

特に請求項で、「こうしたほうが日本語としては自然だがもしかしたら特許請求の範囲に影響してしまうのでは?」などと思い、どちらかというと直訳調で訳したところもありました。

このあたりは、答えは一つではないと思うので、フィードバックを頂いて調節していくしかないと思っています。

 

目標達成のために

当面の目標は、年末までに安定稼働状態に持っていくこと(月売上35万ベース)です。

今回、現在の時給換算ベースの作業効率や繰り返し部分のディスカウントで実際の単価がどのくらいになるかなど、いろんなデータが収集できました。

それらを元にすると、途切れなく案件を頂けることを前提にして、作業効率は今回の約3倍近くまで上げる必要があることがわかりました(勉強の時間を取ることを考慮して、作業時間は週25日、1日8時間とした場合です)。

そしてもちろん、「途切れなく案件を頂ける」には、複数社と継続的に取引がある状態でないと難しいでしょう。

なので、新規開拓→レギュラーとして認めていただく、はマストです。

 

新規開拓できるようになるためには、まずは今の取引先で信頼を獲得すること(1、2回打診を断っても案件を振って頂ける状態になること)、そして処理スピードを上げる必要があります。

そのためには、基礎的な部分(ひとまずは今の取引先で需要がありそうな分野をメインに)の学習を引き続き進めていくことが大事だと思っています。

 

理想はやはり、新しい案件を振って頂いてその中で勉強することです。

案件が来ないようであれば、基礎学習と平行して、今回の案件を踏まえて改定したスキーム(作成中)で対訳のない明細書の翻訳をしていきます。

待てど暮らせど次の案件が来ない時で、フィードバックを見ても致命的なミスがないときは取引先にコンタクトをとって情報収集します。

8月には、新規開拓のためのトライアルに挑戦できるように、必要な作業スピードなどを逆算して進めていきます。

 

POSTED COMMENT

  1. Kao より:

    asaさん

    長期間の実ジョブ、お疲れ様でした!
    こちらの記事、とても参考になりました。
    PCトラブルにも冷静に対応されて、さすがです。
    色々書きたいことはありましたが、今日はひと言だけ、本当にお疲れ様でした!まずはしっかり休んでリフレッシュしてくださいね。

    • asa より:

      Kaoさん

      ありがとうございます!

      PCが挙動不審になって正常に立ち上がらなくなったのが納期前日でした。
      やっぱりこのタイミングで来るのか、と思いつつしばらく休めて
      ノートPCで作業してたら復活したのでまだよかったです。

      納品翌日は目覚ましかけないで寝たいだけ寝ようと思ったら、
      起きたらまさかの10時でした(笑)。
      リフレッシュしすぎたので次の準備をいろいろと進めています。

      コロナでなんとも落ち着かない時期ですが、
      ストレスなるべく溜めずに頑張りましょうね。