こんにちは。
ずっとTrados2017を使用していたのですが、1ヶ月ほど前にようやく2021にアップグレードしました。
おそらく、「そろそろアップグレードしようかな・・・」と思っている方が他にもいらっしゃるのではないかと思います。ちょっとした判断材料になればと思います。
ただ、私は翻訳者としてTradosを使用しており、標準的な機能しか使っていません。また、Trados2021から導入されたクラウド機能も使っていないのでその点はご了承ください。
アップグレードして良かった点
「高度な表示フィルタ2.0」というステキな名前のフィルタが標準搭載されています。これがなかなか使い勝手がよいです。
(デフォルトの画面上ではおそらく表示されていないと思います。画面上のタブ「表示」の「情報」に「高度なフィルタ2.0」があります。)
見た目はこんな感じです。

機能には少しだけ後で触れるとして、個人的にアップグレードしてよかったと思う点は、「フィルタがキビキビ動くようになった」ことです。
どういうことかと言いますと、2017のフィルタは
・フィルタをクリアしてから表示がすぐ戻らない(全セグメントが再び表示されるのに重いファイルだと5秒以上かかる)
・特に正規表現で検索しようとするとスッ…とTradosが落ちる
ことがあり、使い勝手がいまいちでした。
2021ではこれが改善されています(少なくとも私の環境では)。
フィルタクリア後にすべてのセグメントが表示されるまで、確かにワンテンポあるんですがストレスを感じるほどではありません。
そしてこれまで一度も使用中に落ちたことはありません。
ただ、アップグレードしてからあまり重いファイル(セグメント数が多かったり、1セグメントが長文だったりタグてんこ盛りだったり)がなかったので、スムーズなのかもしれません。重いファイルが来たときにまた検証します。
肝心の機能も、「とにかく何でもフィルタリングできる」感じです。
例えば、私もまだ使いこなしているとは言えないのですが、フィルタリングの条件を保存できたりするので、例えばあらかじめ「要注意ワード」を検索するように条件設定をしたものを保存しておけば、チェックツールとして使えるかなと思いいろいろやっているところです。
あとは、フィルタリングした結果に蛍光ペンでターゲットセグメントをマーキングすることもできます(フィルタをクリアしても、マーキングを別途クリアしない限りマーキングされたままです)。
ただ、マーキングをすると、翻訳済セグメントが翻訳中に戻ってしまうので注意が必要です。
それから、2019であれば、プラグインで高度な表示フィルタを使用できるようです(おそらく、全く同じではないと思いますが)。
プラグインに関しては、いつもお世話になっているTradosお役立ちサイト「Trados さん、頑張って!」の次の記事がとても参考になります。
http://fanblogs.jp/sakura2translation/archive/64/0
ちなみにTradosとは関係ないですが、「除外ワード」を使ったフィルタリングもよく使っています。
例えば、以下のように正規表現でand条件でフィルタリングすると・・・
原文:In some embodiments
訳文:^(?!.*(いくつかの実施形態では)).*$
原文に「In some embodiments」があるが、訳文に「いくつかの実施形態では」が含まれていないセグメントが抽出されます。
だいたい、「他の実施形態では」になっていたり、「いくつかの実施形態において」になっていたりしますね。
こういった「原文と訳文が1対1で対応して、かつ1セグメントに1回しか登場しない単語」について検索するのにかなり役に立ちます。
逆に言うと、1セグメントに複数出現する可能性の高い「about」の訳抜けや、「any」など複数の用語が考えられる訳抜けのチェックには向きません(例えば、^(?!.*(任意|いずれか|あらゆる)).*$としてできないことはないですが、限度があります)。
そしてこのフィルタリングで検索できるのはXbenchでチェックしやすい用語とほぼかぶっているんですが、翻訳しながら気になったときにすぐチェックできるので、使い勝手はかなりよいです(Xbenchですといろいろとファイルの設定をしなければならないので)。
その他の点では、2017ではかなり頻繁に「突然落ちる」現象があったのですが、今のところまだ出くわしていません。
これも重いファイルだとまた状況は違ってくると思うとは思いますが、2017よりは全体的に安定しているかな、という印象です。
Trados2021の不満な点
さて、不満な点を挙げておきます。
それはなんと言っても、私がアップグレードをする最大の動機だった「用語認識がされなくなる」「登録された用語が反映されていない」という問題が解決されていないことです。
用語を登録している途中で、用語認識ペインが「用語を検索しています」(だったかな?)の状態で止まってしまったり、登録されているはずの用語が出てこない(ソースセグメントに赤線が引かれていない。特に長文のセグメントで頻発)なんてこと、ないでしょうか。
以前、用語ベースを作り直したりTradosのフレッシュスタートを実行したりなんだりしたのですが解決せず、同じ現象の方も多くいらっしゃるようなので「そういうもんだ」と思い、メインの翻訳作業をmemoQに移行し、現在に至ります。
この現象はやはりものすごく不便ですし、これからもメインの翻訳作業はmemoQでやるつもりです。
もしどなたか、解決方法をご存じであればコメントいただけるととてもうれしいです。実は設定の問題だったりするのか…とも思ったりするので。
まとめ:アップグレードはありかなしか?
かなり一部分からしか2021を評価できていませんが、私としてはフィルタ機能で元がとれたかなと思っています。
ちなみに、2017と2021で基本の操作方法や見た目にほぼ変化はないので、操作方法でまごつくこともないと思います。
「クラウド機能も使わないし、フィルタ機能も今ので十分」であれば、絶対にアップグレードすべき、とまでは言えませんが、そろそろアップグレードしようかなと思っていた場合は、アップグレードしても損はしないと思います。
どっちやねん!な結論ですが、何かの参考になれば幸いです。
*追記:アップグレード時の注意
アップグレードすると、デフォルトで「ファイル-オプション-エディタ-自動化」の
「TMとの一致が見つからない場合は自動翻訳を適用する」にチェックが入っていると思います。
不要な場合は外しましょう。
「身に覚えのない訳文が勝手に挿入されている」のはなかなか恐怖でした。