特許を読み解く

ピエゾ方式のプリンタヘッド、その精密さと情熱に敬服

やっぱり明細書を読むのが楽しい

ここのところ、圧電素子(ピエゾ素子)関連の日本語の明細書を読みつつ

関連する企業サイトの資料を切り貼りしたりして楽しんでます。

 

久々にノートに貼り付けて、落書きしつつどういう構造になっているのか、

何が肝なのかを考えながら進めました。

ノートの一部です。

図解と言うより、落書きに近くなってしまっていますが。

この作業が一番楽しいです。

 

画像の明細書は、キャノンのインクジェットプリンタの

圧電素子を利用したプリンタヘッドの明細書です。

(特開2018-157179・圧電素子およびその製造方法、ならびに液体吐出ヘッド)

 

圧電素子は、上部と下部の電極の間に

電圧を印加されることで変形する圧電材料を挟み込み、圧電層を形成しています。

下記のような構造です。

青とピンクの圧電層は、それぞれ更に複数の層から構成されています。

その圧電層に電極層の金属物質が浸透すると、電極同士が電気的に結合して、

意図しない電流(リーク電流)が流れてしまいます。

 

リーク電流が流れてしまうと圧電層の機能に影響を及ぼすため、

極力避けなくてはなりません。

そのため、従来は別途絶縁層などを形成していたのですが、

コストも手間も掛かります。

 

この特許では、上記の図でいうと青とピンクの圧電層中の空孔率を変えることで

リーク電流の発生を抑制しています。

 

いきなり出てきた空孔率って何ぞや?という話になりますね。

圧電層の主な形成方法として、

圧電性を有する材料を含んだ塗工液を下部電極上に塗布する方法があります。

 

その塗工液には有機物が含まれています。

塗工液を塗布して、乾燥させた後に焼成するのですが、

焼成の際に有機物は燃焼してなくなってしまい、

有機物の跡が「空孔」として残るということです。

 

この空孔率をうまく制御することで桁違いにリーク電流を

抑制することができる、と明細書には書かれています。

ただ、肝心の「なんでそうなるのか?」が実は理解できていません。

空孔が多いほど、圧電層内の結晶の配向性が乱れるから電流が流れにくくなる、と

自分の中で「仮説」を立てていますが、どうでしょう。

(でもこれだと、空孔率を場所によって変えることの説明はつかないですね)

結晶構造とか深い所に行ってしまいそうな気がするので、

今日時間を区切って、少しだけ調べてみようと思います。

 

企業の「パッション」を感じる

圧電素子を利用したプリンタヘッドについて、

こちらのセイコーエプソンのサイトが非常に参考になりました。

動画もあってわかりやすいのもさることながら、

全ての資料からエプソンのプリンタヘッド技術にかける情熱が伝わってきて、

こちらまで熱くなってきました。

 

それに今回、ピエゾ式のプリンタヘッドが想像以上に精密な機械であったことが

よくわかりました。

2.5センチほどのチップに1000個の穴(ノズル)が開いていて、

そこから1秒間に1個のノズルあたり5万発のインク滴を飛ばす・・・

これ、全く想像してませんでした。

ものすごい、世界ですね。

 

そんな「別世界」を見てから明細書に戻ると、

「特に、圧電素子をピエゾヘッド等に用いるためには、リーク電流が1×10-5A/cm2以下であることが求められる。」という記載に目が留まりました。

なるほど、プリンタヘッドはめちゃくちゃ精密だから

圧電素子としても高い性能が要求されるのだな、と肌感覚で納得できました。

 

圧電素子も、本当に面白いです。

今日は対訳の素材を決めて、周辺知識の学習に入る予定です。

学習記録

10/26(金)の学習記録

項目: 圧電素子関連の日本語明細書を読む
目標: 6h     実績:6h20m
メモ: インクジェットヘッド(ピエゾ方式)の学習含む

10/27(土)の学習計画

項目: 圧電アクチュエータ関連の日本語明細書を読む
目標: 6h     

項目: 対訳の素材を決める→背景知識の獲得、類似特許読み込み
目標: 9h