バイオ・医薬

超音波発生の仕組み:圧電効果と光音響現象

生体を傷つけることなく内部の状況を把握できる画像診断には、さまざまな種類があります。

代表的な物は、CTやMRI、そして超音波画像診断装置です。

それぞれ、生体にエネルギーを発射して反射されるエネルギーを測定し、電気信号に変換して画像化しています。

超音波画像診断装置の場合、そのエネルギー源は超音波です。

ではこの超音波、どのようにして生まれているのでしょう?

圧電素子を用いた一般的な方法と、近年注目を集めている「光音響現象」を利用した方法をご紹介します。

 

圧電素子による超音波発生の仕組み

まずは、圧電素子による超音波発生の仕組みと、なぜ圧電素子が使用されているのかを見ていきましょう。

超音波発生の仕組み

圧電素子は、「機械的エネルギー」と「電気的エネルギー」を変換できる素子のことです。

力を加えたら電気が流れる、または電気を流したら振動する、という能力(圧電効果)を持っています。

圧電素子についてもっと知りたい!という方は、こちらの記事もどうぞ。

どうして圧力が電気に変わるの?ー 圧電素子の仕組みを少しだけひとり競歩大会、はじめます 昨日から圧電素子関連の学習を進めています。 企業サイトでの学習、日本語の明細書を読むことから始めてい...

 

この圧電効果を利用して、圧電素子に電圧をかけて振動を発生させます。

その振動が超音波です。

その超音波を生体に向けて発射し、反射されて帰ってきた超音波が圧電素子で受信され、今度は逆に振動が電気信号に変換されることで画像を生成します。

(出典:日本電波工業株式会社

 

圧電素子を使用する理由

圧電素子を使用する理由のひとつは、

「小さなエネルギーで、より多くの振動エネルギーを得られるから」です。

全ての物体は、外部から力をかけなくても振動する固有振動数という周波数を持っています。

この固有振動数と同じ周波数で物体を揺らすと、「共振」といって揺れ方がとても大きくなる現象が起こります。

圧電素子は、超音波領域にこの周波数(共振周波数といいます)を持っているため、超音波を効率よく発生させることができるのです。

 

光音響現象による超音波発生の仕組み

次に、「光音響現象」を利用した超音波発生の仕組みをご紹介します。

光を生体に照射すると生体内の組織が光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによって組織が熱膨張を起こし、光音響波という超音波領域の音波が発生します。

 

(出典:防衛医科大学校のpdf資料より)

 

この「光音響現象」を利用した画像化技術は「光音響イメージング」といい、近年注目を集めています。なぜでしょうか。

その理由のひとつは、従来の画像診断装置で得られない情報が得られるからです。

 

通常の超音波画像診断装置は、超音波受信データを画像化することで外観や血流などの形態的な情報を得ます。

それに対し、光音響イメージングでは例えば血液分布や量など、より機能的な情報を得ることができます。

次の図のように、従来カバーできなかった診断領域をカバーできる方法なのです。

(出典:防衛医科大学校のpdf資料より)

 

まとめ

超音波画像診断装置に使用される超音波は、一般に圧電素子を用いて生成されます。

圧電素子は、超音波領域に共振周波数を持っており、効率良く超音波エネルギーを電気信号に変換できます。

 

一方、光音響効果を利用した画像診断方法もあります。

こちらは従来の画像診断装置でカバーできなかった、機能的診断を行うことができます。

また、光音響イメージングで得た画像と他の方法で得た画像を重ねて表示し、より正確で早い診断に結びつけることもできます。

正確な診断を早く導きだせるように、画像診断装置は日々進化しているのですね。