メディカルライティング

メディカルライティング:書く前に読者・目的・要件を特定しよう

突然ですが、

メディカルライティングと聞いた時に、何か思い浮かぶ文章はありますか。

 

そもそもメディカルライティング? 何ですかそれ、

と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 

今日はメディカルライティングとは何か、

そして文章を書く際にまず注意しなくてはならない大原則のひとつ、

書く前に読者・目的・要件を特定する必要性」について、お話したいと思います。

 

メディカルライティングとは?

「メディカルライティングとは」で検索すると、いろんな答えが返ってきます。

そのくらい、幅のある言葉です。

医療に関連する文書の執筆のことで、次の3種類の文書に大きくわけられます。

  1. 医薬に関する記事の執筆
  2. メディカルコピーライター
  3. 薬事申請のための書類作成

①は私たちが普段ウェブや雑誌などで目にする医療関連の記事、その他医学論文などの執筆、

②は薬を売り出すための宣伝文を書く仕事、

そして③は、開発した新薬の製造・販売を厚生労働省に申請する際に添付する書類の作成を指しています。

この中では③が圧倒的に仕事としてのボリュームが多く、「メディカルライティング」というと、この③の意味で使用することも多いです。

 

こちらの記事に③の文書の種類について、もう少し詳しく触れています。

文系・未経験からメディカルライターになるにはメディカルライターという仕事、ご存じでしょうか。 医療関係の記事を書く仕事? 医学部・薬学部卒とかバックグラウンドがないと難しいので...

 

メディカルライティングの大原則とは

私は今、上記③の文書(新薬の製造・販売申請のための書類)の英文和訳の翻訳者になるために、日々学習しています。

翻訳には内容の理解や英文読解能力も大切ですが、最終的にアウトプットする文章は日本語です。

そのため、プロのメディカルライターの書いた文書と遜色のない訳文(日本語)を作成する能力が求められます。

 

ということで、最近「こうすれば医学情報が伝わる!! わかりやすい文章の書き方ガイド」という本を読みながら、メディカルライティングについて少しずつ学んでいます。

 

他の文書と同様に、メディカルライティングにも「わかりやすい文書」であることが求められます。

この本は修飾語の順番など、具体的な例を交えて「わかりやすい医療文書」の書き方について説明しています。

個別の内容はまた別途紹介する予定ですが、今日はまず「メディカルライティングの大原則」についてお話します。

それは、書く前に「何のために書く文章か」を明確にするということです。

 

書く前に、読者・目的・要件を特定する

「何のために書く文章か」をもう少しブレイクダウンすると、「読者・目的・要件を特定する」ということになります。

こうすれば医学情報が伝わる!! わかりやすい文章の書き方ガイド」の冒頭部分から引用します。

文書を書く前に踏むべき手順

  1. 読者を特定する(その文書の読者は誰か)
  2. 文書を作成する目的を特定する(その文書はどのような目的で作成するのか)
  3. 文書が満たすべき要件を特定する(その文書はどのような要件を満たすべきか)  

(p.5より引用)

具体的な文書で考えてみます。

 

添付文書と呼ばれる医療文書があります。

添付文書とは、医師・薬剤師向けに、製品情報や使用上の注意を記載した書類です。

例えば、このような文書です(全文はこちら)。

 

同じように、製品情報や使用上の注意を記載した書類に、「くすりのしおり」があります。

次のような文章です(全文はこちら)。

どちらも「使用上の注意」についての箇所をピックアップしましたが、使用している言葉、文体にかなりの差がありますね。

「くすりのしおり」は実際に薬を服用する患者向けの情報です。

ですので、薬に関する知識がなくても理解できる平易な文章で書かれています。

これは、「くすりのしおり」が患者に自分が飲む薬について知ってもらい、飲んではならない時に飲まない(医師・薬剤師に相談する)という行動をしてもらうことを目的としているからですね。

 

この薬の添付文書は6ページ、くすりのしおりは1ページにまとまっています。

添付文書には、くすりのしおりには記載されていない細かな投与上の注意、相互作用をもたらす薬剤名などが記載されています。

これは、添付文書の目的が、「医師・薬剤師に各患者へこの薬を処方すべきか否かの十分な判断材料を提供する」ことだからですね。

もっとも、添付文書だけではやはり足りないようで、「インタビューフォーム」という数十ページほどのさらに詳細な文書も存在します。

 

また、それぞれの文書には記載要項が定められていますので、それにしたがって作成する必要があります。

医学雑誌へ投稿する論文では、要件を満たしていなければ受理されません。

書く前に、これらの要件を確認することも大切ですね。

 

まとめ

メディカルライティングは、他の文章と同様「わかりやすい文章であること」が求められます。

わかりやすい文章を書く大前提として、

「書く前に読者・目的・要件を特定する」ことが大切です。

 

これからも、このブログではメディカルライティングについて取り上げていきたいと思います。

今回参考にさせて頂いた本の著者(林健一さん)はメディカルライターであり、さらに様々なセミナーでメディカルライティングについて講義を行っています。

ちょうど、メディカルライター協会主催のセミナーが2019年8月29日・30日に東京大学本郷キャンパスで開かれる予定で、林さんも「わかりやすい文書の書き方」の講義を担当されます(詳細はこちら)。

私も参加予定です。

興味のある方はチェックしてみてください。