バイオ・医薬

「タバコを吸うと肺がんになる」は嘘?本当?

世の中、がんを引き起こす「発がん性物質」と言われているものはたくさんあります。

アスベストや、ナッツ類のカビなどは有名ですね。

その中で、恐らく一番有名なのが「タバコ」ではないでしょうか。

 

特に「肺がん」といえば、

タバコのタールで真っ黒になった肺の写真を思い浮かべる人が多いと思います。

でも、世の中には「タバコと肺がんは何の関係もない!」という意見もありますし、

実際に非喫煙者で肺がんになる方もいらっしゃいます。

 

タバコと肺がん、結局関係があるんでしょうか、ないんでしょうか。

今日はそのあたりをお話していきます。

ある種類の肺がんは、喫煙率と明確な関連がある

肺がんは、がん細胞の性質や発生する場所によっていくつかに分けられます。

そのうち、「喫煙との関連性が強い」肺がんと、そうでない肺がんとがあります。

つまり、喫煙者がなりやすい肺がんと、非喫煙者でもなりやすい肺がんがあるんですね。

これが一緒になってしまっていることが、

「タバコと肺がん」の関係がわかりにくくなっている理由でしょう。

 

肺がんと明確な関連性があるがんは、代表的な4つの肺癌の内の2つ、

扁平上皮癌小細胞肺癌という種類です。

 

さて、いきなり「がん」を「癌」にしたのもあって、何やら深刻さが増しましたね。

実は「がん」と「癌」は、厳密には違うものを指しています。

そのあたりから、少し説明をしていきます。

 

そもそもがんとは?「癌」と「がん」は別物なの?

それではまず「がん」と「癌」の違いについて、

そもそもがん(癌)とは何か?を次の表を使って説明していきます。

肺がんに限らず、「がん」とは「悪性腫瘍」ともいいます。

腫瘍とは、遺伝子変異によって無限に自己増殖する力を持った細胞によってできた腫瘍(塊)のことです。

 

腫瘍には良性悪性があります。

良性腫瘍はいってみればただの「できもの」です。悪さをしません。

もしそれが悪性化すると、増殖するスピードが上がります。

そして腫瘍の周辺組織に食い込んだり(浸潤といいます)、遠く離れた臓器まで転移したりします。

この悪性腫瘍が、「がん」です。

 

表ではまず、「原発性」(その場所でできたもの)と「転移性」(どこかでできたがんが転移してきたもの)に分けています。

基本的に良性の腫瘍は転移しないので、「転移性」と言ったらそれは通常、悪性腫瘍(がん)のことを指します。

 

悪性腫瘍(がん)のうち、できる場所によってさらに2つに分けられます。

上皮組織由来の腫瘍非上皮組織由来の腫瘍です。

 

上皮組織とは上皮細胞によってできている組織で、

具体的には体を覆っている表皮の他、口腔、気管支、消化管などを通じて外につながっている臓器の粘膜、分泌腺(分泌活動を行う器官)のことを指します。

 

非上皮性組織とは、上皮細胞以外によっている組織で、

具体的には筋肉、脂肪、血液、骨などを指します。

 

そして、上皮組織由来の腫瘍のことを「癌」といいます。

なので、「癌」は「がん」の一部ということになりますね。

 

主な肺癌の種類と喫煙との関係

先ほど、「喫煙と明確に関連があるがんと、そうでないがんがある」とお話しました。

ここで、代表的な肺癌について説明します。

肺癌の種類

 

肺癌は、その細胞の性質によって

非小細胞肺癌」と「小細胞肺癌」に大きく分けられます。

「非小細胞肺癌」はさらに部位や特徴によって、

扁平上皮癌」、「腺癌」、「大細胞癌」などに分けられます。

 

一番多い肺癌は「腺癌」で、これが肺癌全体の約60%を占めています。

実は腺癌は喫煙とはそれほど関係がない癌と言われており、非喫煙者に多い癌です。

喫煙者がなりやすいと言われている癌(扁平上皮癌、小細胞肺癌)は、

合計しても肺癌全体の30%ほどです。

 

タバコと肺癌の関係

先ほどから、「タバコと関係がある」とか、「それほど関係がない」とかいっていますが、

一体どのくらいの関係があるの?と思われる方も多いでしょう。

 

まず肺癌に限らず、「がん」全体のタバコの影響ですが、

国立がん研究センターによると、

がんになった人のうち男性で30%、女性で5%はタバコが原因だと考えられていて、

がんによる死亡のうち、男性で34%、女性で6%はタバコが原因だと考えられています。

 

では、それぞれの肺癌に対するタバコの影響はどうかというと、

1999年と少し古いデータとなりますが、

喫煙者がなりやすいと言われている癌(扁平上皮癌、小細胞肺癌)は、

喫煙者は非喫煙者に比べて男性では12.7倍、女性では 17.5倍かかりやすく、

喫煙とあまり関係がないといわれている癌(腺癌)は、

喫煙者は非喫煙者に比べて男性では2.8倍、女性では2.0倍かかりやすいという結果でした。

国立がん研究センター 多目的コホート研究結果より

 

喫煙者は扁平上皮癌、小細胞肺癌に12~17倍かかりやすい。

これは確かに、とても大きな差ですね。

ただ、喫煙とあまり関係がないと言われている腺癌でも、

喫煙すると2倍以上かかりやすくなるという結果がでています。

12~17倍の影に隠れてしまっていますが、2倍以上かかりやすくなるというのも

タバコと肺がんの関係を考える上では無視できない数字だと思います。

 

まとめ

「肺がんとタバコ、本当に関係があるの?」という疑問から、

癌とがんの違い、肺癌の種類をご紹介しました。

癌というのは、悪性腫瘍のうち、上皮組織にできるものを指していました。

そして肺癌の中でも、喫煙によって12~17倍も罹患リスクが高まる癌(扁平上皮癌、小細胞肺癌)もあれば、

非喫煙者とは2倍ほどのリスク差の癌(腺癌)もあります。

いずれにせよ、喫煙は肺癌のリスクを高めるということがわかりました。

 

次回は、なぜ喫煙によって肺癌のリスクが高まるのか?についてお話する予定です。

お楽しみに!

 

<追記>

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